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『死んだ人の魂がどうなるのかなんて、俺にはわかりません。遺体がどうなったところでもうそこに魂はないのかもしれないし、アリデール神教なんて嘘っぱちじゃない本当の神様は……もうとっくに二人を天国に連れていってくれているのかもしれない。わかっています。どうにかしたいなんて思うのは死んだ人間じゃなくて……生きている人間なんだってことは』  これはエゴだ。自分と莉菜の、心の問題。  生きている自分達を危険にさらす価値が本当にあるのかもわからない。翔も瑞穂もきっとNOと言うだろう、でも。 『それでも俺達は……二人の遺体を、取り返したいんです』  それが首だけであったとしても、もう殆ど切り刻まれて残っていなくても――それこそ、骨の一辺でしかないとしても。  愛する人達をあの墓の下に入れてやりたいと思うことの、一体何が罪だというのだろうか。自分達の帰るべき場所は、嘘つきな神様と偽善に満ちた元帥の統べる研究室などではない。同じ志を持ち、同じ痛みを抱えた仲間の元ではないのか。そうあるべきと思うことは、本当に間違いだというのだろうか。 『遺体は冷凍保存され、T区の支部の地下に保管されるのがわかっています。何も今すぐ突入したいだなんて言いません。念入りに準備を行います。……莉菜と、二人で』 『帝王。私たちだけで行います。他の人達の手を借りようとは思いません。あの支部なら、元帥の済む区画とも遠く離れています。遺体が保管されているだけ、一部の事務処理が行われているだけの施設です。警備は他の施設と比べてかなり手薄と見て間違いない。なら、私たちだけでも十分勝算はあるでしょう』 『君達の実力は我々幹部も認めているとも。その作戦も不可能ではないかもしれんな』  だがな、と帝王は額に皺を寄せて告げる。
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