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『だからこそ、君達に万が一のことがあっては困るというこちらの事情も分かってほしい。組織の手は借りないと言うが、君達自身がもう組織の大切な人員だということを忘れてもらうわけにはいかんのだ。爆発物のエキスパートである侑斗。薬物のエキスパートである莉菜。将来は君達に幹部の職を任せたいという者もいるし、私個人としては……君達は十二分に、私の後釜を任せるに足る存在であると思っている。君達は、我々の未来を担うに相応しい存在だ。その君達がいなくなれば、ソルジャーチルドレンそのものに明るい未来がなくなると言っても過言ではないと思っている』 『そんな、そこまで……』 『まあ、これは私のワガママもあるんだがな』  自分達の絶対指導者たる真島薫は、老獪ながらも優しい目で自分達を見つめた。 『私も老いた。未来を、有望な若者に託してそろそろ隠居したいという気持ちも正直あるのだ。君達のような者なら、亡くなった妻も歓迎してくれるだろうさ。……それでもなお、命を賭けて……取り戻すべきと思うのか?愛する同志達の亡骸を』  まさか、真島が自分達をそこまで評価してくれようとは。侑斗は心が震えるのを感じていた。莉菜が評価されるのはまだわかる。でも爆弾オタクなだけ、いつも突っ走ってばかりで翔に窘められてばかりだった自分が。まさか自分たちの救世主たる帝王・真島薫の後継候補に入っているだなんて――こんな光栄なことがあるだろうか。 『真島、さん……』  喜び、そして――それでも胸を焦がす、使命感。侑斗は隣りに立つ莉菜を見た。彼女は眼を潤ませて、そして――しっかりと頷く。  莉菜がいなければ、自分はきっとこの恐ろしい現実に立ち向かうこともできなければ、彼らの遺体を取り戻そうなんてことも考えることができなかっただろう。自分の痛みにいつも寄り添い、支えてくれた愛しい女性。彼女の細い手をしっかり握り、侑斗は告げた。 『ありがとうございます。でも……それでも俺は、どうしても取り返したい。そして』  この荒廃し、腐敗し、それでもなお広がる空は青いことを教えてくれた者達がいる。  これは、自分達がまだ人間をやめていないことを、自分達を認めぬ者達に証明するための戦い。サイコパスでも、犯罪者でも、背教者でもなく――生きて、意思を持つ普通の人間であることを奴らに見せつけてやるために。 『あいつらの墓標に。手向けたい花があるんです』
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