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「そろそろ、突撃しても問題ないな?」  侑斗が告げると、そうね、と莉菜も頷く。 「でも、恐らく全ての人が完全に正面玄関に向かったわけではないと思うわ。多少は警備兵が残っていると思うの。……まずは、モニタールームから抑えてしまった方がいいわね。遠回りだけど、裏口じゃなくて壁を伝って四階の窓から入った方がいいわ」 「……ああ、そうか。そうだよな。裏口で遭遇した奴をぶっ倒して口を封じればいいと思ったけど、監視カメラがあるか、そういえば」 「そうよ。ほんと、せっかく建物の設計図を手に入れたっていうのに、肝心の計画がガバガバなんだから。しっかりしなさいよね」 「そうだな。でも俺が暴走しそうになったらお前が止めてくれるんだろ?」  な?と笑いかければ。莉菜は苦笑して、まあね、と肩をすくめる。 「しょうがないから止めてあげるわよ。……私の運命の相棒は、貴方なんだもの」  同じ苦しみを分かち合い、同じ未来を願う――唯一無二の、存在。愛しいその存在をそっと抱き寄せて、侑斗は頷く。 「ありがとう。……絶対に成功させような」  立ち止まるわけにはいかない。例え――その莉菜が、翔が、認めてくれた“信念”を捨ててでも。人を、何人殺すことになったとしても。  自分達には、命をかけてでも取り返さなければならないものがあるのである。 「ええ。……行きましょう!」  体を離して、拳を突き合わせると。侑斗は莉菜と共に、隠れていた植え込みから飛び出し、力強く地面を蹴って壁を上り始めた。配管や、窓の窪み、壁のわずかなとっかかり。それらを使って高い壁を昇る訓練はすべて修了してある。それもこれもみんな、ソルジャーチルドレンに来てから真島が磨いてくれた技術だ。帝王は、同胞達をまるで血の繋がった我が子か孫のように愛し、時に厳しく時に優しく生きる為の技術を伝えてくれたのである。  あの人に出会い、培ってくれた技術があるからこそ、自分達は今日まで生きてくることができたのだ。ああ、そうだ。そうだというのに。 ――真島さん、ごめんなさい。あなたは俺達を思って、止めてくれていたのに。  自分達の、二人きりのこの作戦に、真島は最後まで反対していた。  それでも強行したのは自分達だ。どうしても、軍に奪われたものを取り返さなければならなかったから。 ――この作戦をやらなきゃ……成功させなきゃ。もう俺達は、生きてるだなんて言えないんだ……!  命よりも大切と言えるかもしれなにモノが、そこにはある。翔が聞いたらきっと、眉をひそめるに違いないけれど。
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