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 だが、現実は――残酷だった。一年前のその日。自分達は翔と瑞穂の二人を同時に失うことになってしまうのである。  ソルジャーチルドレンは大きな組織だが、まだまだ日本にはそれぞれ小さな反抗組織が身を潜み、革命の時を待っている。打倒ダレンマを掲げるも、ついに強大な政府軍に追い詰められつつあった小組織“アフターレイン”を救う為、自分達四人と複数の仲間達はその小さな村へ向かったのだった。  けれど――やがて気づくことになるのである。自分達が、偽の情報に踊らされたということを。アフターレインがその村に潜伏していたのは確かな事実だった。しかし、自分達に救援要請をした時にはもう、彼らは壊滅させられた後だったのである。大規模組織であり、政府にとって最大の敵である自分達ソルジャーチルドレンをおびき寄せて叩く為、政府軍が一芝居打った形だった。  最初に撃たれたのは――瑞穂。その瑞穂を助けようとした翔が、次に敵の砲火を浴びることになるのだった。 『翔……っ!!』 『来るな、侑斗!俺に構わず逃げろ……言っただろ、お前は絶対に、生き残れって!!』  今も、血だらけで、それでも瑞穂を庇いながら必死で叫ぶ翔の姿が忘れられない。 『頼む……生きてくれ!!』  そして。重傷を負った彼らはそのまま連れて行かれて――特に翔は敵に、酷い拷問を受けたという。  だが、彼は最後の力を振り絞り、洗脳される前に瑞穂と共に自害した。そして、二度と帰らぬ人になってしまったのである。 ――どうして。なあどうしてこうなるんだ!俺達はそんなに悪いことをしたのか?ただ、一番大切な人と、大事な仲間と生きていきたいと願った……それのどこが、間違いだったっていうんだ!!  劣った存在、生まれながらの犯罪者、トチ狂ったサイコパス――そういうレッテルを貼られ、愛する人と引き離され、政府が選んだ人間を宛てがわれて子作りさえも強制される。どうして、そんな未来を受け入れられるというのだろう。侑斗と莉菜は抱き合って、子供のように泣きじゃくった。自分達は生まれてきてはいけなかったのかと、そして何故心優しく勇敢な翔と瑞穂が死ななければならなかったのかと。 ――俺達は、神様に愛されなかった。……いや。この世界に本物のカミサマなんて、きっとどこにもいなかったんだ。  それでも、生きなければならない。侑斗は莉菜と二人、歯を食いしばって痛みに耐えた。お互いだけが、この苦しみを唯一理解できる存在だった。抱きしめたぬくもりだけが、まだ自分達がかろうじてこの世界で生きていることの証明だったのである。 ――神様に愛されなくても。都合の良いカミサマなんていなくても。……それでも生きなくちゃいけない。だって、こんな俺でも愛してくれる人がいるんだから。生きて欲しいって、そう願われたんだから。  もう二度と離れないように、莉菜の手を握りしめて――侑斗は再び立ち上がったのである。  彼らを奪い去った者達に復讐をし――奪われたものを、取り返すために。
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