間違った満点の取り方

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一枚目の用紙が配られる前から絶望していた。 (無理だ。文字だけでも解らないのに) ただそうとしか考えられない。 二枚目の用紙が配られる。 頭の中は配られた問題用紙、解答用紙の裏側の如く真っ白だ。 習い始めて早々と英語は諦めている。 まず、アルファベットがろくに覚えられない。順番を楽しく、美しく組み込んだABCの歌も習ったが、どう足掻いても頭の中にインプットはされなかったのだ。 聞き慣れない発音。 筆記上は書くのに、声に出す時には発してはならない文字なんぞ意味不明すぎる。 末尾を変形する事で意味が変わって行く単語。 最も壊滅的な問題点は、英語の文字をどうしても文字だと理解できない点だろう。 故に、アルファベットも謎の記号が並んでいるとしか見えなくて覚えられないのだ。 「……では、ヒアリングテストを始めます。用紙、裏返して」 教壇上の教師の凛と響く声に、一斉に配られた用紙を引っくり返す音が教室内に響く。 続いて、生徒が各々の名を記す音も。
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