プロローグ

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今日も電車の中で彼女と同じ髪型の人がいた。背格好も似ている。 私の降りる1つ前の駅で彼女は降り、小走りで改札へと向かっていく。 「すいません!」 大きな声に、彼女も含め回りの人が振り向くが、次の言葉が出てこない。 回りの人が無視して、改札に向かい始めた。もちろん彼女も。 振り向いた顔は、彼女の面影もなく年齢もまったく違う。 車内でじっと見続け、降りる駅まで同じにして私は何がしたいんだろう? 彼女と似た人と恋愛をすれば幸せになるのだろうか? 去年付き合っていた人には 「もうちょっと考えてくれない?」 と服装の事を注意された。 どこに行くにもチノパンにTシャツ。寒くなれば上着が追加されるだけの私の服装はショッピングモールで浮かない程度の服装だ。 彼女はスカートを履く日もあれば、ジーンズにブーツの日もある。いつもキレイなストールを身につけ、会うたびに美しいと思わせ、幸せな気持ちにしてくれた。 釣り合うように、カッコ良く見せたい、そういう気持ちが私にはなかった。美しく清潔な彼女は、感情や思考が整理されないとよく泣いた。女性はよく泣くと言う人もいるが、整った服装を好む女性は、よく泣くような気がする。好きな人の泣く姿はとても美しい。
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