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「あんたを見てれば分かる。」
ちょっと待って。
分かるって?私の顔に気になってる人の名前とか書いてあるわけ??
それを読んでるの?
どうして分かるの?
そんなに分かりやすい?
恐るべし莉子。
思わず呆気に取られて、驚いて開いた口が塞がらない。ポカンと莉子をじっと見てしまう。
なんと言っていいのか。
「…」
「今日19時に、正面玄関で待ち合わせね。
くれぐれも逃げようとしないこと。」
「……」
「返事は」
「…はぃ…」
…これは…逃げられない。有無を言わせない莉子の圧力。簡単に屈してしまう。
今日の莉子からの尋問に遅刻しないようにいつもよりも仕事をさばく手の動きが早まった。
時折思い出しては身震いをして。
何を聞かれるのか。
包み隠さず話すには、恥ずかしさでいっぱいで。
莉子の言う私が“気になってる人”のことを話すには、もう素直に認めなければいけないのかもしれない。
見え隠れしていたのを見ないフリして、頭の隅に追いやっていることを。
きっと出会った瞬間から分かっていたのかもしれない。
節々で感じていたその予感が現実になることを。
…そんな今の気持ちを莉子に、話す…
…私、今日帰れるかな…
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