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噂とは
自宅の最寄駅から会社まで、30分。
近すぎず遠すぎず、私たちのマンションはある。
家から出た瞬間。私は一気にさっきまでの幸せの気持ちから、そんな空気を漂わせないほど独り身である空気を出し、小さく、暗くなる。
会社に着いても同じ。
自分の席に着いても同じ。
仕事をしているときでも同じ。
私は総務部に所属しているが、去年まで経理部にいたため、たまに私個人に経理部の仕事が舞い込んでくる。それも決まって会社の決算日である月末、お盆前、年末、新年度の春前の猫の手も借りたいほどの時期。
私の勤める会社は“前もって行う“を裏の社訓に習い、皆日々の業務を行なっている。それでも、やっぱり大きな決算日では残業が多くなるし、総務部の仕事も平行に行っているため割と大変。
「おはようございます」
そう言って、部署内に入り、みんなと挨拶をする。
「はよー」
「おはよー」
「おはようございます」
私は入社4年目だから少なからず後輩もいることはいる。だけど直接指導したわけではないから、そこまで親しみはない。直接指導した同僚なんかは、下の名前で呼ばれていたりしている。
私はずっと変わらず「麻井さん」か「麻井先輩」。同僚なんかにもそう呼ばれている。どうやら私は絡みづらいらしい。おしゃれに気を使っていないから、そう言った話も合わないだろうし、そもそもおしゃべりではないから、自分から話すこともない。もうこれが私のスタイルだし、変える気もさらさらない。友人も一人いれば十分でしょ。
そして今日も噂話を聞くことから1日が始まる…。
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