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比較的言いやすいだろう同僚に頼むことにした。まだ期日までが長い書類をお願いするために。
「うん、大丈夫」
「すみません、このD社への見積もりをこの記載されている日までに営業の方に提出するように頼まれているのですが、その、代わりにお願いしてもよろしいでしょうか?…」
緊張しながらも伝えた。
相手の反応をあまり見ることができず、頭の中で何度も復唱した言葉を声に出す。
少しどもってしまったけれど、ちゃんと伝えられたと思う。
「もちろん。ここの会社への書類、何回か作ったことあるから大丈夫。」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございますっ!」
「なんでそんなに驚くの?」
「え、いや、、」
「というか、大抜擢じゃん。頑張れよ」
「え、あ、ありがとうございます」
「悔しい気持ちも確かにあるんだけどさ、麻井さんなら納得だわ、うん。だから、俺に出来ることならできる限りサポートするし、遠慮なく言って」
「……はい」
同僚もとい、隣の席の松村くん。事務的な挨拶と一日一回あるかどうかの仕事上のやりとり。たったそれだけの関係性だったのに。思ったより自分は見られていた。誰とも会話をしない人、の他に仕事への姿勢も見られていた。
松村くん、なんてちゃんと名前で呼んだことがあったかな…
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