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他人からの評価を直接聞くことが中々ない中、こんなにもストレートに言ってくれる。
やはり嬉しいものがある。あまり他人からの評価は気にしていないが、実際に聞くと何か違う。
「松村くん、ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります」
「…お前、俺の名前知ってたんだな」
「ど、同僚の名前くらい知ってますっ」
「ははっ。だよな。他人と関わる気配ないからさ、つい」
「もう。じゃあ、これお渡ししておきますね。よろしくお願いします」
「あぁ」
手に持っていた書類を彼に渡し、自分の席に戻るなりすぐ深く呼吸をして、息がこぼれた。
…緊張した。
胸に手を当てるとまだ少し心臓がばくばくしていた。
仕事の話とはいえ、こんなにも和やかに話せたのは初めてかもしれない。
うまく練習通りに伝わっただろうか。
向井くんと話している時の自分の顔は、緊張で堅くなっていなかっただろうか。
自分の仕事に取りかかれたのは、呼吸を整えて、心臓のばくばくが治る、もう少し経ってからだった。
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