近づく2人

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「急な発表になって申し訳ないが、急遽、麻井さんがあの大口取引の経理担当として加わることになった。今の状況を見てもう一人ほしいと、チームリーダーから相談を受けた為だ。皆、麻井さんのフォローを頼む。…話は以上、今日も一日よろしく。」 朝、急に課長から全体へ麻井さんの参加が伝えられた。 周りがざわつく中、俺もそのうちの一人だった。 なんで? 早い気がするんだけど。 早いというのは、まだ入社して2年目だから。 自分の感覚的に2年目ってやっと慣れた業務を一通りできること。それに加え、所属する部署内で急な状況にも対応できるようになること。 先輩からの指導を卒業し、一人で行えるかどうかがラインだったりする。 中には、飛び抜けてできる人もいる。けれど、それぞれある会社のローカルルールを知るというのは、誰もが通るものだと思う。 知ってから慣れるまでにかかる時間が長いか、短いか。そこが、“差”なんだろう。 麻井さんは、同期の俺から見てもできる方の部類だと思う。 …コミュニケーション力は明らかに欠けてるけど。 それでも、それをカバーできる程の仕事力は、経理の同期の中では1番だ。 早く、正確で、尚且つ丁寧さがある。 無駄話をしない、一見近寄りがたい彼女が選ばれた時は疑問もあったけれど、納得できる部分が多かった。 そんな彼女が、自分の席を立ち俺に近づいてきた。 緊張した顔をして、少し顔を強張らせてる所が欠けてる所なんだろうな、なんて思いながら気づいてないふりをして、自分の仕事に取りかかった。
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