4914人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…少し時間大丈夫ですか?」
目の前のパソコンから彼女の方に視線を向けば、緊張しながら俺に恐る恐る聞いている様子が表情からよく読み取れた。自分から話しかけることはほとんどないんだろう。聞いてくる日本語も少し変だ。
間近で見る彼女は
肌が白く
俯いてて隠れてしまった前髪から覗く瞳は、二重で大きすぎず綺麗な形をしていた。
可愛いというより綺麗という言葉が似合いそうな雰囲気だった。
だけど
噛みそうな言葉に
俯く姿勢に
目が泳ぐ姿は、それすらを隠し幼さを感じてしまう。
しかし、なぜ迷わず俺に話しかけたのか。
他に同性の同期はいるはずなのに…。
………いや、ないな。うん、ない。
色々考えたけど、色々巡ったけど。
そんなこと思うはずがないし、思われるはずがない。
必死に苦手なことをして聞いてくる彼女を、そんな風に考えた俺を殴りたい。
誰か殴ってくれ。
自意識過剰だと。
そんなことを思われてるなんて絶対知らない彼女に、「うん、大丈夫」と答えた。
ホッとしている彼女がいる。明らかに分かるコミュ障の人って、表情がコロコロ変わりやすいな、って思うんだけど、俺だけかな。
「すみません、このD社への見積もりをこの記載されている日までに営業の方に提出するように頼まれているのですが、その、代わりにお願いしてもよろしいでしょうか?…」
俺に頼みたいことを何回も言う練習しましたって感じだな。この表情は。
なんか面白くなっちゃって、ついついからかってしまったけど、……彼女が、長嶋の想い人か…。ちゃんと話すのは初めてだったけれど。…なるほどね。
あいつのやばい心情は分かる気がする。
最初のコメントを投稿しよう!