4914人が本棚に入れています
本棚に追加
会議室の隙間から漏れた声の主は、彼女だった。
本屋での俺の一方的な再会から2日後だった。
あれだけ社内で何かと理由をつけて経理部のフロアをうろついててもタイミングが合わず、会えなかったのに。
会えた嬉しさに噛み締めてると、少しドアが開いていることに気づいてないのか時折ぶつぶつと独り言が聞こえてきた。
「うそだろ…」
どうやら、大口取引のチームの経理として加わるようだ。
思いがけない事に、思わず口元がにやけてしまう。
咄嗟に口元を手で隠した。そして、キョロキョロと周りに見られてないか視線を動かす。
どんだけだよ。
このくらいで、高校生かってくらいに嬉しくて舞い上がるのか。
今までも何人かの女性と付き合ってきたけれど、こんなに一目会えただけでも嬉しくなったりしなかった。
どちらかというと淡白な方だと思っていた。
俺を狂わせる。
今までの俺を覆すかのように。
「こんなところで落ち込んでたらダメね」
そんな声が聞こえた。
「期待してくれているのよ、ここで頑張らないでどうする?」
だよな。選ばれるとそういう風に思うよな。
不安の方が大きいんだろう。
自分を奮い立たせるように言っているように聞こえる。
最初のコメントを投稿しよう!