出会い

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「莉子って経理部にいる麻井さんと仲よかったよね?」 受付の仕事中、人がはけ、ちょっとヒマな時間ができた時だった。 私の隣に立っている同じ受付の同期が話しかけてきた。それって凛子のことよね…。 「うん、まあ」 「麻井さんってさ、入社式当時からさあんまり周りと関わり持たないで、仕事を黙々とこなしてるでしょ?だから、麻井さんが人と話して表情が崩れるところなんて見たことある人なんていないじゃん?」 「うん、まあ、そうね」 「その麻井さんがさ、なんかね、笑ったみたいなんだよね」 「え」 あの凛子が?社内の人間に対して必要最低限しか話さない凛子が? 私でさえも中々見られないのに?? え、え、本当に? 「それ、本当なの?」 「らしいよ。彼女の指導社員が間近で見てたんだけどさ、可愛いというより“綺麗”だったって」 「“綺麗”ね。…そうかもね」 「それって「あの、すみません。15時から約束している〇〇会社の…」 言いかけたところでお客様がお見えになったから、そこで私たちの会話(ざつだん)は終了し、仕事モードに切り替えた。 そう。あの子は、“綺麗”なのだ。 目立つタイプではないし、化粧気もないから地味に見られることが多い。下を見て話していたり、黙々と仕事をしていたり、無表情が多い分、暗い印象を持たれがち。 けど、無表情から少しでも表情が出ると、 純粋で 透明で 無垢な雰囲気が一気に出て、初めてそんな彼女を見た時、同性なのに一瞬ドキッとした。
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