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とどめが銀の留め金付きブーツだ。
これは中央大陸随一の大国ラダーンの貴族や上流市民が履いている。
こんな節操のない服装は嘲笑の的になりそうだが、この若者の場合は不思議と粋に着こなしているので、皆それを個性として受け入れている。
この年季の入った酒場に昼間からたむろする常連客は、派手な人間が馴れた足取りでやって来たのを見て、にやりと笑った。
またどんな面白いことをしてくれるのかと、期待しているような顔つきだった。
「よう、二週間ぶりだな。腹でもくだしてたか?」
ひょろりとした若者がカウンターに寄りかかった途端、髭面の顔馴染みが声をかけた。
「そんなやわな腹じゃねえよ。ここが温かいんで、ちょいと羽を伸ばしてたのさ」
若者は上着の内ポケットを軽く叩いてみせる。
笑うと、きつい印象の緑色の眼が細められ、人懐こい雰囲気になる。
真顔に戻ると、驚くほど整った顔立ちをしていた。
要するに、文句なしの美男。
いかにも女性受けしそうな容貌の優男だ。
「それで懐が寂しくなってやってきたって訳か? おまえはまったくよく利く鼻を持ってるぜ。毎度毎度関心するよな」
髭面の男の言い草に、若者はおどけて眉を片方跳ね上げる。
顎をしゃくられ、肩越しにちらりと後ろを見やった。
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