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「あのね、僕も同じことを言ったんだ。そしたら、おっかない刺青のおじさんが司祭さまを呼んできてくれって頼むんだ。司祭さま、知り合いなの?」
何のことかわからない。だが刺青と聞いて、心臓が縮みあがるほどドキリとした。
「……い、刺青? どこに刺青があったんだ? 行き倒れはその人のことか?」
「行けばわかるよ。キティたちも待っているから、ほら急いで」
ギョロ目をさらに大きく剥いて足を止めたベヒルを、少年は焦れったそうに急き立てた。
元広場であった空間へ出て、壊れた噴水にたむろしている一団を見つけた。
子供たちに取り囲まれている人間をひと目見るなり、ベヒルは背を向けて逃げ出したくなった。そうしなかったのは、今や彼の家族ともなっている子供たちが一緒にいるからだった。
口元に藍色の刺青を施した、目つきの悪い長身の男。
ベヒルにとっては疫病神のようなイアンであった。
「司祭になったそうだな」
逃げ腰状態で近づいてきたベヒルを、相変わらず虫けらを見るような冷たい目つきで見つめながらイアンは話しかけてきた。
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