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プロローグ
西大陸の交易都市のひとつ、サジェット。
西域への玄関口にしぶとく居座り続けること、七百年という歴史を持つ小さな古都。
小さいながらも、東の文明諸国と西の他部族集合体の交易要所としてサジェットは繁栄してきた。
人種も大陸の四方八方から寄せ集まってるから多様であり、市民の職業も街に連なる看板も、人種に掛け合わせて星の数ほどある。
そのうちのひとつ、旅籠を兼ねた酒場に一風変わった若者が現れた。
『一風変わった』と言わせるのは、この人種の見本市のような街では相当なものだ。
大抵は出身地そのものか、それを彷彿とさせる服装をするものだが、この若者の場合は郷土が窺いしれない。
というのも、各地方や国のいいとこ取りで身を固めているからだった。
頭には布をターバン風に巻き付けているので南の砂漠地帯出身かと思いきや、羽織っている長上着は北の中立国ケッフル産。
中の花柄シャツは東の島国デザイン。
ぴったりした黒いなめし革のズボンと腰に巻いた重量感ある黄金のベルトは西域調。
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