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クリスマスのご予定は?
「同人作家にクリスマスがあると思うなよ。」
すでに1日徹夜で作業した翌日安田に言われ、もはや色々と気を使う余裕すらなく返した言葉に安田は不思議そうに返した。
「だって坂巻さん先週入稿は済ませたって言ったじゃないですか?」
確かに新刊を1冊すでに印刷所に入稿済みだった。
「オンデマはまだ間に合うんだよ。」
だって、先週の放送で何も描かないなんてあり得ないじゃないか。
そういうと、安田が大きなため息をついた。
そう言えば先程、ディナーがどうとかと言っていた。
クリスマスに男二人でレストランってどんな罰ゲームだよとも思わなくもないが、安田は安田でなにか考えていてくれたんだろうか。
けれども、こんな時気の利いたセリフが出てこない。
「なんで言ってくれないですか!言ってくれたら手伝うし、飯位作るのに。」
安田は確かに憤慨していた。
だが、俺の思っていた方向と少し違っていた。
「何してるんですか?行きますよ?」
「……レストランはいいのか?」
そう聞いた俺に安田は笑ってキャンセルの電話入れときますと言った。
「コンビニでチキン位買いましょうね。」
上機嫌で歩く安田の後を追いかけながら、一人で過ごさないクリスマスも久しぶりだという事には気が付かない振りをした。
まだ俺は気が付いていない。
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