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クリスマスのご予定は?(未来編)
※時間軸未来(付き合ってます)
同人誌なんてものを作っていると、大体の場合クリスマスなんてものは無い。
いや、ある人もいるのかもしれない。
リア充がいないとは思っていないし、そもそもその前に入稿を終わらせてゆっくりと過ごしている人間もいるのかもしれない。
ただ、俺は毎年この時期はずっとPCに向かって作業をしている。それだけだ。
一応、こいびと?のような何かになった安田だが、以前と何かが変わったのか?と聞かれてもよく分からない。
空気が読めないのだ。そんな細かいあいつとの空気の違いが分かる訳がない。
だから、去年までのクリスマスと同じ様にただひたすら原稿作業をしている。
甲斐甲斐しく世話を焼く安田というオプションはあるがそれ以外はいつもと変わらない。
机にはいつもあたたかな飲み物が置いてあって、安田に合わせて日付が変わる前にはベッドに入る規則的な生活を送っているため実際には去年より進捗はいい。
クリスマスを数日後に控えているが、原稿はほぼ完成していてそんなことは初めてで、ああ、そいういう部分は変わったのかと思う。
「そろそろ、風呂はいりませんか?」
作業机の後ろでテレビを見ながら座っていた安田に聞かれ頷く。
作業中のファイルを保存して立ち上がり、安田の隣に座り込む。
眠たくなってきて目を細めると、髪の毛をなでられる。
そのまま唇を合わせる。
キスは嫌いじゃないと知ったのは、こいつとしてからだ。
もう夜で、髭もぽつぽつと生え始めているのに、こうやって顔を近づけて何やってるんだろうと思わないでもない。
というか、安田は俺のそういう部分を気にしたことが無い。
まあ、安田は体毛が薄い体質らしく、この時間になってもツルツルなところがなんかムカつく。
確認するためにやつの頬に手をのばすとやはり夜だというのにべたつくことも無く、髭が生えていることもなくさらさらで、これだからイケメン様はなんて八つ当たりしたくなった。
キスに集中していないことに気が付かれて、たしなめられるみたいに安田の舌が俺の口腔内で歯列をなでる。
ぞくぞくと背中を走る感覚が快感と呼ばれるものだという事を、俺はもう知っている。
手はもう、安田の頬をなでる余裕はなくてそのまま、あいつの腕をつかむ。
何かを掴んでいないと変な声が出てしまいそうだった。
安田が顔を離したのは、もう唇がふやけるんじゃないかって思ったあたりだった。
一度離れた安田が俺の口元から垂れた唾液を舐める。
その様は酷く扇情的で、思わずゴクリと唾を飲みこんだ。
「明日休みですし、ゆっくりでいいですよね。
お風呂は後にしましょう。」
断定で言われて、でもとか嫌とかそういう言葉を言いたかった筈なのに、思わず頷いてしまった自分は我ながらチョロいと思った。
◆
大の男がエロ漫画みたいにお姫様抱っこで寝室へ行くなんてことは無い。
そもそも骨格が違うのだ。
重くて普通の男には無理だろう。
だから、自分の足で歩いて行かないといけないのだが、これが存外恥ずかしい。
キスで足元はもうおぼつかないし、自分で抱かれるために寝室へ向かうという事を自覚しているだけに、なんていうか毎回全く慣れない。
寝室へ行ってからそういう雰囲気になることもあるし、その前にという事もある。
けれども、基本的に自分が抱かれるという許容をしないと行為は始まらない訳で葛藤が無いと言えば嘘になるが、それよりもなによりも安田と触れ合いたいと思ってしまうので、大概俺は馬鹿なんだろうなと思う。
薄暗い寝室は間接照明だけが付いている。
もう一度、キスをして、回した腕が触れる服がもどかしくて、お互いに服を脱がせ合う。
少しでも近い位置に行きたくて体をすり合わせると、お互いに昂っていたものがこすれて、甘い吐息が出る。
それから、二人で顔を見て笑って、安田に押し倒された。
下肢につけていたものも全部脱がされて、ローションを塗りたくられる。
ヌチヌチという音を聞いただけで興奮してしまう程度には慣れ切った行為だけれど、やはり最初に指を入れられるときの違和感だけはぬぐえない。
「ぅんっ……。」
苦しそうな声が出て、唇をかみしめると、とがめる様に安田がキスを落とす。
二本、三本と指が増えるにしたがって、声が耳を塞ぎたいような甘くて媚びた物になる。
男の媚びる声なんて気持ち悪いに違いないとどこか冷静な部分では思うのに、チラリと盗み見た安田の股間は完全に臨戦態勢で、それにものすごく安心した。
自分だけが馬鹿みたいに興奮して、欲しくて欲しくて堪らなくなっているんじゃないと思うと安心するのだ。
というか、見るんじゃなかった。
「ねぇっ、あッ、もう、良いからっ!
入れてほしッ……。」
懇願すると、安田は「痛かったら、直ぐ言ってくださいね。」と言いながら、それでも直ぐに後ろに起立を押し当てた。
貫かれる瞬間の衝撃に喉をそらす。
中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、あられもない声を上げて、それでも胸の奥から湧き上がってくるのは、安田に対する確かな愛おしさだった。
その気持ちのまま、あいつの背中に腕を回す。
ぴったりと隙間の無い位くっついてしまいたくて、しっかりと背中につかまった。
後はただただ快楽に身をゆだねて、安田で頭の中がいっぱいになった。
◆
行為が終わってけだるい雰囲気の中二人で荒い息を落ち着かせる。
賢者タイムは必ず訪れる物だと思っていたけれど、俺はこの終わった後の雰囲気が嫌いでは無い。
さすがに疲れ切っていてもう一戦という気分にはならないが。ベッドで横たわって手を繋いで、絡ませてベタベタとするのは心地よい。
「水と体拭くもの持ってきますね。」
パンツ1枚で安田が言う。
さすがに今起き上がれる体力も無いので頷く。
一人になって、安田が戻ってくる間少しの間、考える。
原稿の進みは全く問題が無いし、仕事も大丈夫だ。
安田が戻ってきて、水を飲んで、体を拭く。
パンツとスエットを着直して、それから……。
「なあ、クリスマスだけどさあ――。」
たまには恋人?らしいことをしてみてもいいかもしれないと思った。
了
お題:(えろ)甘々、未来
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