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翔が辰巳と一緒に席に着いて間もなく、刑事部長の柴田が険しい顔つきで声をあげた。 「殺人事件発生だ。被害者は女性一名、現場は本牧小港町のアパート。動ける奴らは急ぎ…」 柴田が言い終わらないうちに、翔と辰巳はさっさと席を立つと一係を後にした。 背中で柴田が話を最後まで聞けと半ば諦めた様に怒鳴る声が聞こえたので、翔は後で連絡します、とだけ叫んで一歩先を行く辰巳の後に続いたのだった。 「まったく、あいつらは。息が合うのは結構だが話を最後まで聞きやがれ」 「まあまあ、翔くんが来てから輝くんの元気も戻ったし。いいじゃないですか。いつもの通り、僕と皇さんが詳細は伝えますよ」 緊急時にも関わらずいつものペースを貫く槙に諭されて柴田はため息をつく。 「あの二人とお前らを足して二で割りゃあ完璧なんだがなぁ。詳細伝えるからとっとと行け」 「分かってますよ、ひどいなぁ。皇さん準備出来た?」 槙に呼ばれて戸田皇は入れたばかりのコーヒーをごくり、と流し込む。 「はいはい。準備いいよ、孝太郎くん」 「てめえらはのんびりしすぎる……。はあ、いいか。住所は本牧小港町××丁目×番地にあるアパート‘シーサイド本牧’の二階、ニ〇三。階段上がって一番奥だ。第一報で分かっているのは被害者が刃物で切りつけられていること、状況からみて死後それ程時間は経ってねえ様だ。犯人は凶器を所持している可能性が高い。気をつけろよ」 「はい」 「分かったら現場に行け。あのバカ二人にも伝えとけよ」 はあい、とのんびりした返事を返して戸田と槙は現場へ向かった。 ⭐︎⭐︎⭐︎ 「……はい。はい、分かりました、ありがとうございます!では後程現場で、はい」 「現場どこだ?」 助手席で翔が通話を切りながらたったいま槙から聞いた住所を伝えると、辰巳はよし、と小さく返事をしてハンドルを切った。 車の上部に付けられたパトランプが大きな音を立てるなか、翔は簡潔に現時点で判明している事実を辰巳に伝えていく。程なくして二人を乗せた車は現場に到着した。 アパート前はすでに規制線が敷かれ、最初に現場に急行していた派出所勤務の巡査が二人を待っていた。
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