百万回の願い事

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「あなたの願いを百万回叶えます」 「百万回!?」  部活帰りに何気なく寄り道した近所のリサイクルショップで、ぱっと目に入った古びたランプを手にとった。 「おじさん、これいくら?」 「百円でいいよ」 「やす!」  そんなやりとりがあって僕はこの不思議なランプを購入したわけだ。アラジンになった気分で部屋のベッドの上で丁寧にこすって見れば、ランプからいわゆるランプの魔人が飛び出してきたのである。 「いやいや、多くない普通三回とかじゃないの?」 「まぁ普通はそうなんですけど、ご主人様のおかげで私は百万年の封印から解かれましたので出血大サービス、もってけドロボーというわけです」 「そうか、じゃあM先輩をぶん殴ってこい!」 「かしこまりました」  そう言って魔人はどこから現れた煙に紛れ姿を消した。一人残された僕は、今日も部活で理不尽にM先輩に殴られたことを思い出していた。M先輩とは一つ年上の僕が大嫌いな先輩で、この間も機嫌が悪いとの理由で理不尽に殴られた。本当は殴り返してやりたいところだが、そんなことをしたら僕が部活を辞めなければいけないことになるので、いつも我慢している。 「夢みたいだな、とりあえずもう寝よ」  僕はベッドの中で思いつく願いごとを三十個ほど考えて眠りについた。  翌朝の練習にM先輩は来なかった。どうせサボりだろうと気にもとめなかったが、三日連続で学校にも登校していないともなるとさすがに周りが騒ぎ出した。どうやら友達の家に行くと言ったきり家にも帰ってきていないらしい。 「ご主人様ぁ」  M先輩の失踪からランプの魔人の存在も忘れかけていた一週間後に再び魔人は僕の部屋に現れた。  ぼろ雑巾になったM先輩を抱えて。 「おい、これって」 「はい、願い通り百万回殴ってきました」 「ふざけんな! もとに戻せ!」 「それはできません。また百万年後のご利用をお待ちしております」  それだけ言って、魔人はランプもろとも消えてなくなった。ぼろ雑巾のようにボコボコにされたM先輩と顔面蒼白の僕を残して。
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