午後十二時の王子様

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 通報されなかったのを幸いに、おれと和とは早々に、駅へと向かって歩き始めた。 すぐ右隣に並ぶ和の横顔に、おれは話し掛ける。 「おれはもう、和と付き合っても犯罪者にはならないよ。――和はもう、十八才になっているんだ」  言い終えたおれの目に飛び込んできたのは、半ば呆れなかば残念そうな和の顔だった。 悲しげな瞳でおれを見下ろし、和は言う。 「・・・センセイ、おれの誕生日って明日だけど?」 「分かっているよ。四月一日だろう?だから和は、今日の正午、午後十二時に十八才になったんだ」 「――ナニそれ?」  悲しげではなくなったが、わけが分からないと、和の表情は物語っていた。 正直、和に説明しているはずのおれですら、よくは分かっていない。 「民法、法律でそう決まっているんだって!三月いっぱいで区切ればいいのに、ホラ、四月一日までは早生まれ扱いだろ?それはその、つまり、そういうことであって・・・」  しどろもどろのおれの説明に我慢の限界だったのか、とうとう和の叫び声が遮った。 「分かった!わかったよ!よくわからないけど、わかったから!」  矛盾をしたことを言った後で、声の調子(トーン)を落として、和はおれへと、確かめたしかめ言ってくる。 「とにかく、おれはもう十八才になっていて、センセイと付き合っても、センセイは犯罪者にはならない。――これでいい?間違ってない?」 「・・・・・・」  おれは黙ってうなずいた。 五才も年下の和にとても上手くまとめられて、情けなかった。 ――恥ずかしかった。  そして、やっぱり和は頭がいいと、改めて感じた。 おれなんかよりもずっとずっと冷静で、物分かりがいい――。と、その時は感心したのだが・・・ 「でも、どうして――、どうしてそんなこと、今ここで言うんだよ」 「え?」
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