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そして一転、笑う。
――困ったような照れたような、今にも、泣き出しそうな笑顔だった。
「それに、付き合おうって言ったの、おれの方からだから。――一月からずっと、言ってきたし」
声だけは言葉だけでは、何でもないことのように言う和に、おれは合わせた。
「そうだったな。ヤらせろヤらせろって、ずっと言っていたな」
「センセイ――」
おれへと向けた和の目が一瞬、キラリと光ったのも見て見ぬフリをした。
おれはおれで、何食わぬ顔で話し続けるのに精一杯だった。
声が上ずらないように、小さく息を吞んだ。
それを吐き出し、おれは一息で言った。
「和。明日、空いているか?予定があるなら、少しでもいいから――」
「予定なんか、あるわけないだろ‼」
「⁉」
とうとう、和がキレた。
そして、おれの両肩を掴み、おれの体が自分の方へと向くようにした。
「センセイ、本当に分かってんの⁉おれがどんなにどんなに!明日になるのを待ってたか⁉」
どんなに!を繰り返す和の切羽詰まった感じに、おれも又、煽られる。
「分かっている!――わかっているよ!だから今日、話したんだ。宗司郎さんとちゃんと別れてから、和と付き合いたいって思っていたことを!」
「センセイ・・・」
何とか言いたいことは、全て言い終えた――。
その安心感からか、つい、本音が口を突いて出た。
「――だって、明日は、話どころじゃなくなるだろう?多分」
「・・・・・・」
言った後でしまったと思っても、もう遅い。
おれは和の顔をまともに見ていられなくなって、思わず目を閉じた。
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