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わざわざ、クラスメイトの女子に聞いたと言っていた。
部活のマネージャーだったとは言え、和に話し掛けられて、喜んだだろうその女の子の顔が思い浮かんだ。
――見たこともないクセに。
和も、宗司郎さんと同じように、体格に見合った大きな硬い手をしていた。
手の平が広くぶ厚いだけではなく、指も又長かった。
その手の平がついさっき、おれの手をすっかりと包み込み、長い指が、荒れた肌を慈しむかのように撫でた。
その時の感触を、今、ハッキリと思い出した。
「和――」
名前を声に乗せてしまうと、もうダメだった。
――抑え切れなくなった。
和ではなく、宗司郎さんが触れたばかりの体に、自分で触れる。
和のことを思って。
さっき、和が触れ、握りしめた手と指とで。
ミネラルウォーターの冷たさが残っていて、ひんやりと感じる。
和だってきっと、今のおれと同じようなことをしていると、おれは信じて疑わなかった。
もしかすると、この瞬間にだってしているのかも知れないと思う。
同じ夜の底に横たわって、おれと握手をした、あの大きな手で、おれのことを思いながら、自分でしているのかも知れない。
「おれたち、付き合っているんだよね?」と聞いてきた時の、和の顔が声が、頭の中に鮮やかに蘇ってくる。
あの時おれは、すぐさま否定したが――、どの口が言うんだと、自分で自分に呆れ果てた。
おれはその口で、和に四月一日まで待っていてほしいと頼んだ。
和はそんなおれに、待つと言ってくれた。
それはもう――、付き合っていると言ってもいいのだろう。
和だって、そう思っていたからこそ、おれへとたずねてきたに違いない。
でも、おれには一つだけハッキリとさせたい、いや、させなければないことがあった。
「――っっ!」
和にしていると、和にされていると思いながら、おれは達した。
天井の、シャンデリアもどきの照明を見上げながら、しばらくの間、ぼんやりと余韻に浸る。
枕元に置いたペットボトルへと手を伸ばし、額へと当てた。
まだまだ冷たいそれに、頭が意識が、途端に冷やされていく。
――さっき、宗司郎さんにされた時よりも、今の方が、ずっと気持ちよく感じられた。
そして、それはそのまま、おれが見付け出した答えだと思った。
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