そして熊はゆく

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 さあいよいよと、アルバムの次のページに手をかけたときだった。  ふいにオルゴールのようなメロディが流れ始めた。音自体はとても穏やかで心地のよいものであったけれど、あまりにも急に流れ始めたメロディにボクはたいそう驚いて思わずアルバムを床に落としてしまったほどであった。  音のする方を振り向くとそこには、あのベッドの上に飾られている回転するおもちゃであった。ええと、確か、ベッドメリーといったか。そう、ベッドメリーだ。ペガサスがあしらわれたベッドメリーがオルゴールの音と共にゆっくりと回っている。  さっきまでそんなそぶりは全くなかったのに。不思議に思いベッドメリーに近づきスイッチを消した。消すとそれは簡単に静かになった。  ではとあらためてスイッチを入れてみるとそれは、先ほどまでと同じように心地よい音楽を流しながらゆっくりと、それはゆっくりと回り始めた。  ペガサスが三頭、そのペガサスの間に星と雲がぶら下がっていて、各ペガサスたちはその星や雲を追いかけるように、自分より前のペガサスを追いかけるようにやや上下するように回転した。  想像以上にそれは精巧な作りのベッドメリーなのだろう。でも何故さっきは急に動き始めたのだろうか。  何度かスイッチを入れたり消したりしてみたけれど、このベッドメリーにはタイマー機能はついてはいなかった。  つまりはそう、スイッチを入れなければ動かないはずなのだ。  この部屋を見渡しても、居るのはこのボクと、強いて言えばこのぼろぼろなウサギのぬいぐるみくらいなものだ。他には誰もいないし、そんな気配だってないのだ。  もちろんこのウサギのぬいぐるみが勝手に動いたなんてこともないし、仮に動けたとしてもボクはこのぬいぐるみをずっと手にしていたのだから、このウサギには無理な話だ。  悩んだって仕方がない、考えたって仕方がない、わからないものはわからないのだ。ボクはそう頭を切り替えた。  あらためて、アルバムの続きをみようと床に落としてしまったアルバムを手にした。表紙をめくってボクは、アルバムに起きた異変に気がついた。  さっきは表紙をめくるとそこには胎内を写したエコー画像が貼り付けられていたのだが、そこには何もなかった。  ページをめくると、さっきはそこにあったはずのこの部屋の写真もなかった。  そしてその先のページにも、写真は一枚もなかったのだ。  悩んだって仕方ないとは思うし、考えても仕方ないとも思うし、わからないことはわからないのだと思うけれども、さすがに短時間で奇妙なことが立て続けに起きすぎて、気味が悪くなった。  ボクは窓から見てちょうど正面にあったドアから、早々にこの部屋をあとにすることにした。
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