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ボクはいったい何者なのだろうか。その答えはなかった。
ふと荒野の先に大きな岩壁が見えてきた。
岩壁の先にはまた川が流れている音が聞こえた。
岩壁をよく見ると、そこには映し出されたかのような人影がいくつも蠢いているのがわかった。
ーヒ、カリ……-
ーカ……ヒカ……-
影たちがボクに向かって手を伸ばしてくる。
ひ、光?
光が欲しいのか?
ボクは影たちのささやかな言葉を聞き取ることができた。確かによく見れば僕の胸元にはぽっかりと温かい光があった。
彼らはこれが欲しいのだろうか。
ボクはその光を手にとり、彼らの方に差し向けようとした。すると別な声が聞こえるのだ。
ー駄目、だよー
ー駄目……その光を渡してはー
何で駄目なのだろう。
何故光を渡してはいけないのだろう。
頭の中の疑問に答えるようにまた、声が聞こえた。
ーそれがないと、アタクシのようになってしまうー
ーアタクシのように、生まれ変われない……-
正直、何を言っているのかはさっぱりであったけれど、一人称がアタクシの声は、確かにボクのことを思ってくれているのが伝わってきた。
だからボクはその言葉を信じた。
ーさあ、もういくんだー
「誰かはわからないけれど、ありがとう」
感謝の言葉を述べてから、岩壁の向こう側に行った。
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