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青瑠はハッとなって、胸元を押さえた。慌てたせいで、ウシンチーの襟元を開いたまま着替えをし、見られている事実に気付かなかった。
「贈り物? 誰からさ。ひょっとして青瑠の想い人?」
興味津々の玉弥から身を引くと、青瑠は首を横に振った。たとえ親友であっても、教えるわけにはいかなかった。
いつになく頑なな青瑠の態度に、玉弥は不思議そうに小首を傾げた。だが、取り成すように微笑むと、青瑠の頬を掌で軽く叩いた。
「私のことは気にしないで、早く行きな。福利(フクリー)が匿ってくれるからね」
触れてきた掌は冷たかった。随分と前から庭に潜み、機会をうかがっていたのだろう。
全て打ち明けたい衝動に駆られた。
玉弥は知らない。青瑠が真剣に美屋久から逃げようとしている事実を。
三日もすれば諦めて、夫婦の契りを交わす花嫁たちと、大差ないと思っているだろう。
(ごめんね、玉弥。もしも私の決意を知っていたなら、協力してくれないだろうから……)
黒朝衣を頭に被り、大股に遠ざかっていく玉弥の背中を見つめながら、青瑠は胸の蝶を握り締めた。
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