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病室の前で柚希は立ち尽くしていた。身内でもないのにここまで同伴しているというのも相当怪しいのではないかと思ったが、あまり気にしないことにした。彼女が俺に振り向いた。何かに縋るような目をしていた。俺は一つ頷いた。
「大丈夫だ」
そう言うと、柚希はにわかに脱力したように見えた。しかしまだ手に力が入らないのか、ノブに手をかけたものの扉を開けずにいた。「あの……」仕方がない、と俺は手を伸ばす。「いいか?」柚希が頷いたのを確認して、俺は扉を一気に開いた。
リノリウムの床。鼻腔を刺す消毒液の匂い。ふわりとカーテンがなびいた。窓が開いているようで、風が身体を押した。梨沙、と柚希は言った。
病床の上で横たわる少女は、ゆっくりと目を開けた。柚希が生唾を飲み込む音が、聞こえた。梨沙はゆっくりとこちらを見て、そして控えめに口を開いた。
「……どなた、ですか?」
柚希を振り返ると、彼女の姿は忽然と消えていた。
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