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第五夜 ラーメン
ドアを開けると。
意に反して誰も居なかった。
今日も今日とてバタバタとしちまって、気が付いたらもう真夜中だ。
この間、油のおっさんが来てからもう4日、いや、5日か。
そろそろ又訪ねて来るヤツが居てもおかしくないかなと思ったんだよ。
ところが、誰も居やしねえ。つまらねえな。
何で、誰か来たような気がしたかってえとな。
別にノックの音がしたワケじゃないんだが、な。
波のような、水しぶきのような音が聞こえた気がしたんだよ。
ホラ、おっさんが昔馴染みは公園の池あたりに住み着いてるって言ってたじゃねえか。
だから、さ。水の音がしたからソイツが来たんじゃないかと思ったんだよ。
気のせいだったかとドアを閉めようとして、ふと視線を下に向けると、そこに人形があった。
「何だ、こりゃあ」
ネズミの人形だった。
人間と比べりゃあ小さいが人形としちゃあかなりデカい。
オレの身長の2/3ほどもある。
そして、何でか知らねえけど、その人形はずぶ濡れだった。
誰が置いてったンだ?
「こんな時間にわざわざ人の部屋の前までこんなボロ人形を捨てに来るなよなあ、ったく」
映画やドラマの中の話なら、出てみたら赤ん坊が捨ててあった…なンてえ話はありそうだがな。
そんな時は孤児院とかの前って相場が決まってるだろ。
…あれ? 今は孤児院て言わないんだっけ?
ともかく。
そんな場面じゃ、「この子をお願いします」とか書き置きしてあって、な。
それか、あれだ。
産まれちまったものの育てられなくって犬や猫の子を捨ててく…てのもありがちだな。
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