0人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「息苦しい…」
ポツリと呟いた言葉は誰にも拾われず消えていく。
私の世界はまるで小さな金魚鉢だ。
窮屈で、自由のない世界。
17歳。
幼い頃、漫画の主人公のようなドキドキワクワクした人生をおくっていると夢見ていたけれど、すっかりその主人公と同い歳になってしまった私は現実を思い知らされた。
私、星野小春は高校二年生。
周りが進路のことを考える中、私は死ぬことばかり考えている。
「生きたいのに生きれない子が居るの」だとか、「まだ若いんだから」とかは聞き飽きた。
だってそんなことばかり言って誰も
「何でしんどいの?」なんて聞いてくれたことないんだもん。
私は…本当は寂しいだけだ。
「ただいま」
玄関で自分の帰宅を知らせてみても返事は帰ってこない。
そっとスマホを見ると母から連絡が入っていた。
「3人でご飯行ってくるからテキトーに食べて」
我が家は4人家族。
母と父と健という今年高校受験の出来のいい弟と、それから私。
私だけが孤立してる。
「…食べなくていいや」
さっきの連絡で一気に食欲がなくなってしまった私は自分の部屋に行って現実から逃げる様にベッドにダイブした。
心にどす黒い何かが溜まって行く。
ゆっくりと目を閉じた。
しばらくして声が聞こえた。
どうやら皆帰ってきたらしい。
「小春、入るよ」
父の声が聞こえて起き上がった。
「勉強は?」
その言葉に返す言葉を探していると殴られた。
「そんなので薬剤師になれると思ってるのか!」
なりたくない。なれるとも思ってない。
薬剤師とか医者とかただただ勝手な安定した職と言うイメージだけで決めつけられた私の将来。
自身の本気でなりたい気持ちがない限りなれる職業では無い。
絶対に。そんなの分かってる。
それでも、そんなことは聞いてなんて貰えない。
「勉強も運動も出来ない人間なんて生きる価値もない。勉強しろ」
「…今からします」
確かに運動は出来ないし、勉強も中の中。やっぱり私には生きる価値はないのかな。
「ねぇ小春、何か食べた?」
そこにフラフラっと来たのは母。
いつもの事だけど仲裁に来た訳では無い。
「なにも」
「そう。健が明日お弁当いるらしくて買い物行くけどなんかいる?」
…私のお弁当は作ってくれないくせに。
「なにも」
「ふーん。じゃあ行ってくるわ」
そう言って母は買い物に向かった。
ただただ自分の理想だけを押し付ける暴君な父と
弟贔屓の激しい母。
「お父さん、私頑張って○○大学の薬学部に進むから」
母が去ってからも「詰めが甘い、こんなんじゃ」とネチネチと嫌味を言う父の機嫌を取るように嘘をつく。
ただこの場から逃げたいという気持ちと
こう言ったら少しでも私に期待してくれるのではという淡い期待をして、嘘を重ねる。
私は本当は…なんて絶対に言えない。
親に私の存在を認めて欲しい。
愛して欲しい。
死にたい。でも生きたい。
ただ、私は寂しいだけ。
ただ、私は生き方が分からないだけ。
最初のコメントを投稿しよう!