「かなへびの逆鱗」

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「かなへびの逆鱗」

「ねえねえ」 夏の日差しも熱い日曜日、生徒達だけで集まったテニスコート。 63876b7a-4ad2-4e9c-98c5-3834f876102c ネットを張る作業の(かたわ)ら、女子部員が男子部員に呟く。 「あの二人付き合ってるんだよね?」 ネットを挟んだ男子が目配せする。 「黙っとけよ。本人達ばれてないと思ってるんだからさ」 「そんな事言ったってさ、こんな事になっちゃってどうするんだろねあの二人」 ネット越しの男子が大袈裟に首を(すく)めて見せた。 ーーーーー 「幾ら負け続けだからって女子なんぞには負けねーから」 言って男子部部長、野上信也はネット越しの女子部部長、伊勢美香に向かって中指を突き出して見せる。 いつもなら放課後の帰り道、人目を忍んで手を握りに来る信也の指を美香は乱暴に捻じ曲げる。 「いでででで!」 悲鳴を上げる信也に向かって唇を突き出して美香が反撃する。 「そんなセリフは勝ってから言いなさいよ!」
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