「かなへびの逆鱗」

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事の起こりは些細な行き違い。 合同練習を終えた後片づけの最中、何の気なしに女子部員が発したセリフが男子部員のコンプレックスに火を点けてしまったのだ。 「女子の方が部員も多いんだし、コートもう少し使いたいよね」 この意見に別の女子がのっかってしまった。 「だよねえ、どうせ男子は大会に出ても……」 みなまで言わなかったのは女子のやさしさだったのだが。 実際、男子部のヘタレぶりには顧問も痛し痒しだったのだ。 それでなくとも、世界的スポーツであり、テレビ等でもたびたび取り上げられる華やかな硬式テニスに比べてマイナーなソフトテニス。 レギュラー争いの絶えない女子部に対して、団体戦に参加できる人数を確保するだけで精一杯の男子部。競争の全く起こらない部活に男子部員のモチベーションも(たぎ)る訳もなく、ギラギラした女子部の練習に比して、おままごとと揶揄されるのも致し方ない男子部の練習の穏やかさ。 まるでそれぞれの部長の性格がそのまま出たような両部の雰囲気だ。
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