機械人形の涙

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「ーーー最終テスト開始。魂の結合確認、正常。記憶転移、一部損傷あり。機体動作確認開始。確認終了。全動作正常。起動に問題なし。機械人形、タイプα(アルファ)。起動します」  そして、私が目覚めた。水の中にいるように音が反響し、ぼんやりと意識が覚醒していく。そして、私が目覚めて一番最初に目の前にいたのは。  そうでした。 「パパ……」  私の名前は。ミノリ。 「思い出したよ……パパ」  私は貴方の娘。貴方の、最愛の子供。 「今まで思い出せなくて、ごめんね」  私は動かないパパにそう話しかける。涙はその間も止まることなく流れる。様々な感情が流れ込み、次第に処理速度が追いつかなくなる。 「パパ、私を作ってくれて……ありがとう。側にいてくれて、ありがとう」  遅くなってしまったけれど、私、思い出したよ。だから、もう一度、私の名を呼んで。パパ。ようやく、私の笑顔をパパに見せられるのに。 「……」  その返事は返っては来ない。どれだけ強く手を握っても、もうその手に温もりは感じない。もう、全てが遅すぎたのね。ごめんなさい。もう一度、パパに笑顔を見せたかったのに。 「パパ……」 「……素敵な笑顔だ、『ミノリ』」 「っ……!!」  それは空耳だったのかもしれない。私の勝手な想像だったのかもしれない。もう一度パパの声を聞きたいと願い、私の記憶の中から引き出し再生したのものだったのかも。けれど、私にはそれだけで十分だった。 「うん…………パ……パ……………」  私の時間ももうないみたい。視覚や聴覚にノイズが走り、もう体は動かせない。  けれど、私の心は満たされていた。こんな幸せなことはない。最愛の人のそばで眠ることができるのだから。  私が作り出されたのは、またパパとママと三人で暮らすため。笑顔を二人に届けるため。だったのかな。  パパとママと過ごした百年は、今でも忘れないよ。  ありがとう。パパ、ママ。  素敵な百年でした。
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