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海軍豪プールと北港と。
まっしぐらに伸びてゆく舗装道路を、俺と夏生は、駆けてゆく。道路の両側にはサトウキビ畑。
島ではサトウキビ栽培が盛んで、島の半分近くがサトウキビの耕地だ。夏の真っ盛り、サトウキビは雨を呑み、日光を食らい、ぐんぐん、ずんずんと伸びてゆく。
道の先から、自転車が近づいてくる。駐在所の真栄田巡査だ。手を振りながら、すぐ傍で止まった。俺と夏生を微笑みながら眺める。
「朝早くから、揃ってお散歩かい?」
笑うと高校生みたいだ。一昨年から南大東島にやってきた真栄田さんは、人懐こくて、みんなから慕われている。
「うん。夏生と遊びに行くの」
真栄田さんはチラと夏生を見て、小さく頷いた。
「翔はいつも、夏生と一緒だね。学校の子とは遊ばないの」
俺と夏生は同時に頷く。真栄田さんは少しだけ、困った顔をした。
「真栄田さんはサトウキビ畑に何か用事?」
問いかけると、「ああ、それがね」と、たちまち顔を引き締め、警察っぽい顔つきになった。
「内地から来た、中学生の男の子を探してるんだ。少し前から、荷物を持って、一人で歩いているのを見たって情報が寄せられてさ。でも、どこかに泊まってる様子もないし」
夏生が目配せしてくる。鉄平のことだ。
「……警察に捕まるの?」
「保護するのさ。さすがに中学生が野宿じゃ心配だからね。家出かもしれないし」
俺も夏生も、「知らない」と答えるだけだ。「じゃあ、見かけたら教えてくれよ」と、真栄田さんは帽子の庇をちょっと持ち上げてみせた。
自転車がじゅうぶん遠ざかってから、夏生は「面倒くさいことになってきた」と嘯いた。
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