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「こいつが蒼。俺の親友」
クシャクシャになった写真を見せてきた。俺と夏生は、額を突き合わせるようにして写真を覗きこむ。
二人の少年が写っていた。ひとりは鉄平。髪は今よりも短いから、半年ぐらい前の写真かな。笑っている。太陽と雨をたっぷり浴びて育った、向日葵みたいに。今とは大違いだ。
鉄平の隣には、すっきり整った顔の男の子が微笑んでいた。何だか明け方の月みたいに儚くて、凜としている。
「なっ、なっ! 蒼ってイケメンだろ? 頭もいいし、足も速いし、もう、ヤバくてさ! おまけに性格もいいんだぜっ」
蒼の自慢をする鉄平は、ニヤけまくって見ていて恥ずかしい。
「おまえら、夏休みだから暇してるだろ? 一緒に、蒼を探すの手伝えよ」
思わず夏生と顔を見合わせた。夏生は明らかに嫌そうだ。指図されるのが大嫌いなんだ。
断れと目だけで俺に合図するけど、迷った。
確かに、鉄平は態度はデカいし自分勝手だけど、笑うと妙に愛嬌がある。それに、蒼をとても大事に思っているのも伝わってくる。
「あとさー、明日は食い物を持ってきてくれよ。島に来るので、すっからかんになっちまった。飛行機代クソ高いよな。昼からなーんも食ってないんだ。かわいそうだろ?」
勝手に話を進めていく。
「待てよ。俺たちは、まだ――」
夏生が抗議しようとしたとき、鉄平の腹が音を立てて鳴った。空腹なのは本当らしい。
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