ウージ畑とゆうれいと

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 やっとサトウキビ畑から出たときには、とっくに日は沈んでいた。島を囲む防風林が黒々と立ちはだかって見える。海風に肌を撫でられていると、数分前まで鉄平と話していたことも、何だか夢のような気がしてきた。 「翔はあいつに協力するつもりか?」  先に立って歩いていた夏生が、振り返った。 「だって……なんかー可哀想やっさー」 「翔はほんとお人好しだよなー。鉄平の言ってたこと、額面通りに受け取るなよ。色々おかしいだろ。神奈川の中学生が、南大東島で待ち合わせって、ありえるかー? しかもケータイぐらい持ってるだろうに、相手と連絡つかないなんてさ」  夏生のほうが、俺より頭の回転が速い。ただ、俺以外の前ではあんまし喋らない。 「だけど……鉄平は、演技をしているようには見えなかったさー。蒼を探したいってのは本当だと思う」  夏生は俺を一瞥すると、目尻を下げた。 「まあ、あいつに付き合うのも面白いかもな。夏休みは、始まったばかりだし」
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