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俺と夏生は、揃って濡れ鼠で坂を上った。向かいから賑やかな声が聞こえ、子供が現れた。サチにミクにアキラにワタル。みんな同じ小学校だ。
「あっ! 翔! もう帰るの!」
サチが嬉しそうに駆け寄ってきた。夏生にもニコッと微笑む。
「西瓜割りするってば。おまえもやるか?」
アキラが、自分の頭ほどもありそうなな西瓜を、両手で持ち上げてみせた。
「また今度な」
俺と夏生は、同時に答えた。
そのとき、やっと鉄平が息を切らしながら、二人に追いついた。鉄平を見たとたん、皆が揃って「あ―――っ!」と声を上げ、指さした。
「あれさー! 警察が探してるって言ってた、犯人だやー?」
鉄平は全身を硬直させた。次の瞬間、その場を逃げ出す。でも、荷物を背負った鉄平が坂を上ると、恐ろしく鈍足だ。俺が鉄平の手を引っ張り、夏生がお尻を押してやる。
「逃げんなや! そいつは翔の友達かー?」
ワタルの声が背後から迫る。ワタルは足が速い。
しかし、「うげっ」という悲鳴が響いたとたん、ワタルは追ってこなくなった。振り返ると、坂を転げ落ちてゆく西瓜を、みんなで追い駆けていた。
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