Novel

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 子供の頃から、本を読むのが大好きだった。友人と野球やサッカーをするくらいなら、一人で本を読んでいる方が良かった。そういうわけで、子供の頃は本当に友達と言えるような人間はいなかった。だけど、もともと人と関わることが得意ではない僕は、特に不便だと感じたり、寂しいと感じたこともない。  大人になってからも、読書が好きなことに変わりはない。毎日、通勤電車の中では本を読んでいるし、食事をしている間も、風呂に入っているときも本を読んでいる。本の中の世界にどっぷりと浸かっている時間は、僕にとって何より心地よく、安心できる時間だ。  僕が読者好きになったのは、おそらく祖母の影響だろう。祖母はまさに本の虫で、自宅には大量の蔵書があった。その殆どは小説だったが、分野は恋愛、ミステリー、歴史、SF、その他諸々、多岐に及んでいた。  両親は共働きだったから、僕はよく祖母の家に預けられた。だけど、祖母は殆ど僕の世話などすることなく、時間のある限り本を読む人だ。結局、僕は自分が暇を潰すために、本を読むということを覚えた。少なくとも、そこにいる限り、本に事欠くことはなかった。
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