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「慧さんって、無駄にイケメンだから描きづらい……」
「いやぁ、照れるなぁ!」
「ねぇねぇ、天羽さん! このイラスト、欲しいんだけどダメかなぁ?」
翔平が目をキラキラさせている。
「あ、いいですよ」
蛍がノートをちぎって翔平に渡すと、翔平は嬉々としてそれを抱きしめた。
「あ! 皺にならないように……慧! クリアファイル寄越せ!」
「うるさいなぁ。勝手に持ってけばいいじゃん! 僕はモデルで忙しいの!」
蛍は心の中でそっとツッコミを入れる。
──お前たちは、いったいいくつだ!?
自分よりも年上の男に向かってなんだかなぁと思いつつも、蛍はノートにペンを走らせる。
慧はつけなくてもいいポーズをつけている。
翔平は文具一式が置いてある場所に一目散に駆けていく。
オウルは蛍の左手に移動し、ペンの動きを大きな目で追っている。
クスッと笑みを漏らすと、オウルが蛍の顔を見上げた。
「蛍?」
「いえ、何でもありません。ただ、平和でいいなぁって」
「はい、平和です」
蛍がノートから顔を上げると、慧が魅惑的な笑みを浮かべ、ウインクをする。
「……慧さん、そういうの、いらないです」
「え~! ちょっとはドキッとかしてよ!」
「あ~はいはい。慧さん、かっこいいー」
「棒読みっ!」
今日も平和な英探偵事務所。
次の依頼があるまでは、この平和なひとときを十二分に堪能しなくては。
蛍はよしっと気合を入れて、再び手を動かし始めた。
■番外編2 英探偵事務所の平和なひととき 了
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