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本棚に追加今日は金曜日の夜で、明日は土曜日で。学校に行けない。きみに会えない。
理由をつけて会いに行こうか。それとも突然訪ねてきてくれないかな。明日は、妹さんの買い物に付き合うんだっけ。じゃあ駄目かな。
話したいなぁ。触りたいなぁ。ぎゅうってこの腕に、閉じ込めていたいなぁ。
「…さわくん」
聞こえるはずもないのに、名前を呼んだ。ただ空気に溶けていくだけのその音が、彼を連れてきてくれないだろうかなんて、馬鹿げたことを考えながら。
おれの方から行っていいなら何時でも何処でも飛んで行くんだけど、あんまりしつこくして嫌われたくは、ないしなぁ…。
そろそろ電源切って、瞼を閉じようか。
おやすみって耳元で囁いてくれたなら、いくらでも眠れる気がする。
おはようって明るい日差しの中で微笑んでくれたなら、きっとこの上なく良い一日になるだろう。
スマホを枕元に置いて、目を閉じた。瞼の裏にもやっぱりきみが居る。おれが作り出した、幻想の…。
ピロンッ。
小さな箱が光って少し震えた。何かメッセージを受け取ったみたいだ。
ガバッと飛び起きて内容を確認する。
ちなみに彼から以外の通知は来ないようにしてるから、このメッセージは間違いなく彼からだ。こんな時間に珍しい。
メッセージを見て、思わず頬が緩んだ。
『遅くにゴメン』
澤くんらしい。律儀だなぁ。澤くんからならいつだって喜んで返信するのに。
『寝ようとしてたら何か今日のこと思い出して、腹立ったから。仕返し』
澤くんも寝るときにおれのこと考えてくれてたのか…。どうしよう、嬉し過ぎて手が震える。
そうしてメッセージの下に添付された画像には、パンを頬張るおれの顔が映っていた。知らなかった…いつの間に撮られてたんだろう。
ピロンッとまた軽快な音が鳴って、新たなメッセージが表示された。
『お前の貴重な間抜け顔。じゃ、そんだけだから。おやすみ』
もう何から表現したら良いのか分からない。澤くんのカメラロールにおれがいて、寝る前にわざわざ思い出して送ってきてくれるなんて。
溢れ出す感情を押し殺し何とかおれも『おやすみ』とだけ返して、また画面が暗くなる。
けれど心は明るい日差しの中に居るみたいで、どきどきしてふわふわして。
あぁ、折角彼が文字越しでも『おやすみ』って言ってくれたのに、これじゃあ寝られる気がしないよ。
あぁ、やっぱりすぐにでも会いに行きたいよ。
今度はおれから、澤くんの写真をひとつ送ってやろう。そうして何かしら理由をつけて、小さな箱越しでも彼と繋がっていよう。
『おやすみ』
その言葉を抱き締めて、今日は眠ることにしよう。
そうして今度『おはよう』って言ってもらって、録音することにしよう。
真っ暗な部屋の中で、ひとつだけ灯ったひかりを抱き締めておれはまた、瞼を閉じた。

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