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1話 1プロローグ
剣撃の音が草原に響く。
野花の咲き乱れた大地で5人の人間が切り結んでいる。
白峰が見下ろすその光景は決して麗らかな日差しに適うような穏やかなものではなかった。
4人は明らかに野盗で、たった1人の人間に向かって襲い掛かっている。ならず者たちの凶刃を軽くいなし、1人、2人と地に伏せさせていく。
彼女と野盗たちの力の差は一目瞭然だ。余裕の証に彼女は剣を抜いてもいない。柄に納めたまま、彼らと対峙している。
しばらく切り合う高い金属音が続いた果てに最後の一人を地に沈めて、女性はやれやれと言わんばかりに息をつく。
そして、騎士は振り返る。黄金に輝く金髪は綺麗にアップしており、またその隻眼には騎士然とした風貌に見合った強い力を秘めていた。
野盗たちの本当の目的である彼と向き合う。年の頃なら18,9ぐらいであろう黒髪の少年は大人びて見えた。目の前の出来事にも動じず、くすんだ灰の瞳は女性を捕えている。白を基調とした旅装束が風に翻ってなびく。
彼は荷物を背負っていて、襲撃者たちはそれを奪おうとしていたのだ。
「おまたせ、怪我はないかな?」
平然と立っている少年に女性は笑みを浮かべながら話しかける。
「ええ、助かりました。ありがとうございます、騎士様」
「当然のことをしたまでだよ。君、山の向こうから来たみたいだけど、エル・ラ・ラクスに行くの?」
「ええ、聖典を見に」
「そっか、よかったら街を案内してあげようか。私もあの街に用があってね」
女性が手を差し出し、少年は笑顔で握手を交わす。
「よし!じゃあ行こうか。私はオーダ・ジェラルミン。君の名前を聞いてもいい?」
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