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「とりあえずやるべきことは解かりました。私はこれからあの街で聖剣を見つければいいのですね?」
「見つける?ヘズからもらったんじゃないのアンシェル?」
「いいえ。聖剣の使い方については心当たりがあるのですが、剣の事は聞いてません」
「本体はなくても名前とかは聞いてないの、アンシェル?」
今まで黙って話を聞いていたオーダが話に割って入った。
アンシェルは軽く首を振り、オーダは困ったようにポリポリと頬を掻く。
「あれ、そうなの。ヘズ様でもさすがに神域に関する事は知らなかったのかな」
不思議そうな顔のアンシェルより先にヨルダンが言葉を継いだ。
「いえ、彼はきっと知ってますよ、ただ回りくどいことが好きなんです。それではまずは聖剣の名前を探しましょう。おそらくは祭花に関係した名前でしょうから、私も協力しましょう」
「そうだ、ヨルダン大神官。私があなたから聖剣を賜った時と同じようにすればすぐに呼べるのでは?」
「無理でしょうね。世界の均衡に干渉できる程の力を持つ剣なら、おそらく神から直接授かる可能性が高いでしょうから、名前を構築する言葉を街に戻って探しましょう」
「すみません、私にも解かる様に説明してください。なんだか剣そのものより名前の方が重要みたいな言い方なさってますね、二人とも」
「聖剣ってただの剣じゃないだよ。固有の名前があってそれを知る者だけに仕えるんだ。普通は神官を通じて神から剣の名前を授かるんだけど、君は自分で探さなきゃいけないみたいなんだよね。時が来たら剣の名を呼んでこの世界に聖剣を召喚しなきゃいけないんだよ」
「・・・そのために知識をつけろ、ということですね。となれば、ここを出たら最初に行くのは図書館ですか?」
「いえ、図書館ではなく儀式場へ行きましょう、儀式の時間まで間がありませんから。祭花を見れば何かわかるかもしれません。儀式場にいる間に聖剣について詳しい人間に話をつけておきますから」
「ヨルダン大神官有難う御座います」
「ありがとうございます。お願いします」
紅茶を啜るヨルダンにオーダとアンシェルが軽く頭を下げた。
「なんだか今回は大変そうだけど大丈夫アンシェル?やっぱり私もそっちに言ったほうがいいかしら」
「あなたにも役目があるでしょう、気にしないでくださいシンシア。平気です」
「そうそう、私たちも協力しますし。そうだ、シンシアさんはヘズ様からどんなお役目を与えられたのですか?」
「私はね、”花の都”の蝶の採集を任されてるの」
まるで友達と話すかのような調子でオーダが彼女の役目について聞き出しているその横で、表情にこそ出さないがアンシェルはかなり動揺していた。
(ヘズ、どういうつもりなんだ)
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