君の幸運

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街外れの掘っ立て小屋に連れ込まれた雛は床に叩きつけられ、意識も朦朧とした状態で床に倒れていた。着物は血まみれで、泥に汚れることを心配していたのは昼だったのを何となく思い出す。泣いてもいいのかもしれなかったが、頭を打ったおかげでぼんやりとしていて、冷たい床の上で身動ぎした。すると、胸元からお守りがぽとり、と落ちる。 「あ?なんだこりゃ」 それになにかを感じたらしく、男は刀をお守りに突き刺した。中身が飛び出す。封と書かれた紙を見た男は顎に手を当てて得心したように頷いた。破り捨てながら呟く。 「あぁ、これで力を抑えてやがったんだな」 がらん、と何かを退けて男が倒れたままの雛の前に座る。よく見ればそれは骨の一部だったー人間のだ。 男は凍りついた雛の表情が可笑しかったのか、喉の奥でくつくつと嗤う。 「怖いか?怖いよなァ?」 「………っ」 何とか距離を保とうとして、後ろに下がろうとした雛の襟首を掴んで引き寄せ、男が獰猛に笑う。 「安心しろ。お嬢ちゃんが骨になるのは当分先だ。しかも天寿を全うできるぜ、俺の傍でなァ。だから、仲良くしようぜ?」 言いながら男は雛の手をとった。白い指先を見て、続ける。 「"幸運を呼ぶ妖"は、その妖力を放出し続けることでまわりに幸をもたらすーが、あまりに強い力は反動となって妖の寿命を削る。それを抑えるーいいや、正確には妖力を"一方向に向かわせる"儀式があるらしいよなア」 雛は言葉を失った。男が"幸運を呼ぶ妖"の存在を知っており、その上で雛を襲い、更に"儀式"の事を知っているーなど、普通では考えられない事に、漸く思考がいきついたのだ。あまりにも短時間に事が起こりすぎて何にも理解が追い付いていなかった。 だが、漸く理解が追い付いた。 男が、ただの噂などで雛の存在を知ったのではなく、"誰かに"情報を与えられたのだと………しかもそれは、上辺だけの情報ではない。 何故なら男の言う儀式とはー
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