16人が本棚に入れています
本棚に追加
眩しい……どこだここは?
目を開けると、そこに広がるのは鬱蒼と生い茂る大森林。
なんで、こんな所に?
疑問が湧き上がり、身体を起こそうと立ち上がる瞬間“見てしまった”。
自分の腕が人間とは思えない獣の腕となっているのを俺は見てしまった。
手は五本指だが人間の手と違い、鋭利な鉤爪がある。引っ掻けばそれなりの手傷を負わせる事が出来そうな凶悪さだ。
足や腹も黒毛で覆われている。まるで獣のような容姿だ。
何がどうなっている? 俺は確か、変な男に殺されたはずだ。
それがなんだ? 目を覚ませば森の中、しかも自分の身体が人間ではなくなっている?
どこのファンタジー小説だよ……。
溜め息を吐き、俺はもう一度周りを確認するが、どっからどう見ても木々に覆われた森の中にしか見えない。
顔を覆いたい気持ちを抑え、現状を確認する。
まず、俺は人じゃない“何か”になった。
次にこの森の中だが、当然見たこともない森だ。日本なのかも怪しい。
近くに人がいるかもわからん。とはいっても、人に話しかける事は出来ないだろうな。こんな見た目じゃなぁ。
再度溜め息を吐きながら何気なく空を見上げると、驚くべき光景が目に入る。
「太陽が……二つ……?」
そう、太陽が二つあるのだ。信じられない光景であり、信じたくない光景だ。
太陽が二つあるということは、ここは日本どころか、地球であるかも怪しくなった。いや、地球である可能性は限りなく0に近くなったと言うべきか。
心中穏やかじゃない。焦り、不安、未知の恐怖。
自然と身体が震える。
そりゃそうさ。
見知らぬ場所に人間じゃなくなった身体、例え三十を迎えた大人でも冷静などなれない。
くそっ!
自分の震えを止めるように近くの木に手を叩きつける。
痛みを感じ、苦悶の表情をしながらも、震えは止まった。
冷静になれ。俺。
ここでいつまでも動かずにいても事態は動かない。
生き残る為に必要なことは?
……水に食料と寝床か。
まずは水の確保が先だな。川がある場所を探すとしよう。
ヨロヨロとしながらも、俺は森の奥を進んだ。
最初のコメントを投稿しよう!