プロローグ《始まりの日》

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 言葉と同時に懐からダガーを取り出し、投げてくる。 「うォ!?」  反射的に身体が動き、俺は木陰から慌てて飛び出す。 「コボルト……?」 「見た目はそうだが、体格が大きすぎる。それに毛色が違うぞ。灰色じゃない。黒色だ」  倒れた状態から身体を素早く起き上がらせ、警戒する。  およそ日本人とは思えない、欧米人のような彫りの深い顔立ちなのに、日本語?  謎に思えるが、今はこの状況をどうにかするのが先決か。  相手の一挙手一投足見落とさないように警戒していると、男は警戒しながらも己の得物を構える。 「おい、こいつはコボルトの亜種系じゃねぇか?」 「あぁ、俺もそう思う」 「いくらコボルトとはいえ、油断はするなよ」  警戒を顕にする彼らに、俺は内心焦る。  ここで俺が敵ではないと言っても、信じられる訳がない。かと言って、戦うという選択肢もできるなら選びたくない。  人間を殺す覚悟も、戦う覚悟もない今、俺が出来るのは唯一つ。  逃げるが、勝ち!!!  素早く方向転換し、ジグザグに森の中を走る。  先程のダガーのように投げ物で攻撃されたら一溜まりもないからな。 「な!? おい、待て!!」  待てと言って待つやつがいるか!  俺は後ろで叫ぶ男達から出来る限り離れるように全速力で駆けた。
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