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はぁはぁ……撒いたか。
さっきまで男の声が聞こえていたが、今は逆に静かなもので、俺の息遣いだけが森に響く。
最悪だ。人間に会うなんて。それも武装しているときた。
心臓が止まるかと思ったが、なんとか逃げ切れたのは運が良かった。次はこう上手くはいかないだろう。
ただ、生き残れた。あぁ、生き残れたんだな。
呆然と空を見上げる。
木々の縫い目から見えるのは2つの太陽。
あぁーあ……本当にここは地球じゃないんだな。
自分は化物になった。人間だった頃の暮らしなんてもう出来ないだろう。
出来るはずがない。
なんでこうなったんだろうか。
考えても意味のないことはわかっている。だが、どうしても考えてしまう。
目を瞑れば、人間だった頃の暮らしに戻っているんじゃないか、これは悪い夢で、自分はあの通り魔に殺されておらず、病院のベッドにいるんじゃないかと、そう考えてしまうんだ。
……いや、いい加減現実を見よう。
俺はあの時死んだ。そして、どういうわけか化物に生まれ変わった。
これは覆しようもない現実だ。
それに、この世界はどうやら地球の頃よりも危険が多いようだしな。
未だ未知な部分が多いが、あの人間を見た感じ、魔物を討伐する存在のように思えた。
つまり、人間が組織立って魔物を狩っているという事が想像出来るわけだ。
ネット小説であった《冒険者》と言われた存在がこの世界では存在している確率が高い。いや、十中八九存在しているだろうな。
だとしたら人間と事を構えるのは得策じゃないな。
人間を殺すことに忌避感があるってのもあるが、何よりも、組織に目をつけられると厄介だ。
あの時逃げたのは思いの外良い選択だったのかもな。
もし交戦していたら厄介なことになっていたはずだ。
やれやれ、人間じゃないだけでこんなにもハードな人生になるなんてな。
全く、嫌になるぜ。
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