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 ベッドのうえで寝転(ねっころ)がっいるモートはシガーを(くわ)えながらオニールの部屋のなかを(なが)めていた。実に居心地のよい場所であった。  この住居はオニールのバーの上階にあった。その一室で、いましがたまで男と男のレスリングの一回戦がおこなわれていたのだった。  モートは灰皿(アッシュトレイ)にシガーの灰を落とすと、センスの良い室内を再び眺めた。  オニールの部屋はシックなインテリアで統一されていた。  天井からこもった光で室内を照らす<ヤコブセン・ランプ>。複数のラインが交差した格子柄(チェック)模様の壁には<バンクシー>の絵が額装され、そのしたに北欧デザインの無駄なでっぱりがないチェストが置いてある。フロアーにはイタリー製のソファーに<イサム・ノグチ>のガラステーブル。そのうえには観葉植物の<モンステラの鉢>。室内のコーナーに目を移すと難解な建築構造で木枠(ブロック)を積み上げた<フランクロイド・ライト・タリアセン>がコーナーポジションにも関わらずしっかり存在を主張していた。  オニールが手にグラスをふたつ持って戻ってきた。  階下のバーから調達してきたのだろうトロピカル・ドリンクのような真っ青な液体のはいったグラスだった。  オニールはモートの寝そべるベッドの脇のナイト・テーブルにドリンクを置いた。  モートは寝そべりながらオニールの尻をさすった。 「イヤン!? モート兄さん、恥ずかしい。モウッ! お(さか)んなんだから!」 「そうかい? いやいやオニール、おまえのほうがここ数回で随分積極的になってきたじゃないか」  オニールが身をかがめ、モートにキスをした。  モートはオニールの首に手をまわすと、もう放してやらないぞ! というようにやや左腕にちからを込め、オニールのやわらかいくちびるを吸った。  ふたりは互いに抱きしめ合い。熱いくちづけ(ベーゼ)を交わしはじめた。  オニールはモートに濃厚なくちづけをされたまま、いま持ってきたグラスのひとつに手をのばした。 「モート兄さん、あなたもどうです? これ(スゴ)いですよ」オニールが真っ青な液体がはいったグラスをモートにさしだした。  琥珀色の液体(ウイスキー)ならばモートも目を輝かせただろうが、オニールにさしだされた見るからに甘ったるそうなトロピカル風のドリンクであれば、まだ<バドワイザー>のほうがひと汗流した体にはよかっただろう。モートはくちびるを(とが)らせた。 「いいや、遠慮しとくよ。そういうのはあまり好きではなくてね……」  モートはリゾートのプールサイドで肌を(あら)わにサングラスをしたビキニ姿のオンナのそばにかならず置いてある小道具としてのトロピカル・ドリンクを思い浮かべた。  オンナの添え物として、そのドリンクはそこに置かれ、マッチョな頭の弱い――だが精力だけは抜群(バツグン)――のオトコどもが声をかけるきっかけをわざと用意しているしたたかなオンナの(たくら)みの図を思い浮かべた。 「ヘイ! (ウマ)そうな! ジュースだね?」と、ムキムキの上半身で肌を赤く日焼けしたオトコの声掛けの(あいだ)にビキニ姿のオンナはナンパしてきたオトコの品定めをサングラスをしたにずらした眼でするだろう。お目に(かな)えば「わたしの”ジュース”もおいしいわよん」と言い、意にそぐわない場合は「()せな! 筋肉バカ(ビーフケイクス)!」とのことばを吐き捨てるだろう。これは私の勝手な思い込みだろうか?  「モート兄さん、これはね、精力強壮剤なのですよ。中国製ですがね、(スゴ)いんですよ」  モートは片眉をつり上げた。 「なおさら好きじゃないなぁ。と言うのも、そういうものに(たよ)ればあとが大変だ。そのときはいいだろうが、そういう代物(しろもの)にいちど手を()めれば、それがなければどうにもならなくなってしまうことになるよ」 「うふふふっ、モート兄さん。コーク(ドラッグ)じゃないですよ。これは――」  オニールはモートの目のまえでドリンクを(あお)った。 なんと! オニールがそのドリンクを飲んだそばから、オニールのジュニアがムクムクと大きくなった。  モートは固唾(かたず)を呑んだ。 「ウップス! お、大きい(ヒュージー)……」 「兄さん! こんどは、ぼくの番(マイターン)です」  モートはオニールに抱きつかれた。 そして着痩(きや)せして見えるオニールの引き締まった上腕(じょうわん)(もも)を持たれ、股をおっぴろげにされた。  普段はアニキとして威厳(いげん)()るうモートだったが、今回は役割を変更したのだった。これもまたオトコ同志だからできる醍醐味(トゥルージョイ)だった。  モートはオニールにのしかかられて、ふたたび熱いくちづけを交わした。  砂糖菓子? のような甘い味がした。「……わるくはない」  さっきオニールが(あお)ったドリンクの味なのだろう。  オニールは(すさ)まじくファックに燃えていた。  モートはオニールとの初夜のことを想起すると、恥じらいながら受け身に(てっ)していたオニールが随分積極的に攻めてくるこの姿に若干(じゃっかん)たじろいでいた。  オニールはドデカいジュニアでモートに攻め込むと、眼下のモートのジュニアを(にぎ)り、激しく擦り(スクラッチ)あげた。  モートは目を白黒させた。 「ウッ、ウップス! こりゃあ、最高(ロケンロール)だ!」モートは口笛を吹いた。  オニールはなおもモートの18番ホールと旗竿(ピンフラッグ)を刺激する。 「うひぃ! オニール! 気持ちいい!」 「モート兄さんっ! 英語で一言(イングリッシュプリーズ)!」 「う、うひぃ! It’s Amazinng(たまらん)!」
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