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 リチャードは、しきりにルームミラーで後部座席に座る女を気にしていた。  仕事場のカー・ディーラーのまえでウロウロしていたこのホワイトブロンドの女に声をかけ、自宅まで案内してきたこの絶世の美女がオカマだと知ったのは、エルム・ストリートを出発してからちょうど5分が経ったところでだった。 そのあとこのオカマが裏の長屋に住んでいた”ブランドン・ウォルシュ”だとわかったのは、さらに5分が経過してからだった。  リチャードはことのいきさつ、いまの状況がまったくつかめていなかった。  リチャードの運転するビュイック・ルセーバーの後方からパトライトを回したシボレー・カプリスがパッシングをしてきた。   キャシーがシートベルトをはずし、助手席の背もたれに乗りかかってうしろと話しをしているのでリチャードは、ぎょっとしたが、このハイウエイ・パトロールカーはビュイックに停車を指示することもなく猛スピードで追い越していった。 「やれやれ、ほかにデッカい捕物(アクシデント)でもあるのか?」  リチャードは、追い越していったパトカーに気がつかず話に夢中になっている女たちをルームミラー越しに見ていた。
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