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本日晴天なり。雲二割程の晴天、紫外線の量は多め。 そんな清々しい朝にも関わらず、我が家は非常にシリアスな場面に立たされている。 僕こと山田 龍彦はいつものように寝床で目を覚まし、少し遅くなったと欠伸をかみしめながら顔を洗ったりと身支度を整えた。 うん、ここまではいつも通り。 鏡に向かっていた時、一瞬見慣れない姿の人が後ろを横切った。しかし瞬間的だったのと前日の夜遅くまで読んでいた漫画の事が脳裏にあって、意識的にスルーしたのだ。 「おはよう」 台所で朝食作りをしている背中に声をかける。 「おはよう、珈琲飲む?」 「うん。ああ、自分でやるよ」 母の機嫌も悪くない。鼻歌を歌いながら菜箸を揺らしている。 珈琲をマグカップに注いでテーブルに置くと、先に席に着いていた父が読んでいた新聞から顔を上げる。 「父さんおはよう」 そう声をかけると父は眼鏡の奥の目を柔和に細めて微笑んだ。 「今日は授業あるのか」 「うん、午前は一つだけ。その後は人と約束があってね、夕方帰るよ」 「そうか」 短い会話でまた新聞に戻る。僕はテレビのニュースをぼんやりと眺めた。 「そう言えば虎彦と兎美は?」 「二人ともまだだわ。あらやだもう、こんな時間」 何の気なしに尋ねると、台所から声が飛んできた。 ちなみに虎彦(とらひこ)は弟。兎美(うさみ)は妹。彼らは二卵生の双子で高校生だ。 「そっか、じゃあ僕が起こしてくるよ」 暇だし。と立ち上がると、慌ただしく階段を駆け下りる足音が聞こえた。 「やばいやばい!あ、おはよ!もう行くわ!」 嵐のように降りてきて、トーストを引っ掴んで口にくわえて去っていく。数秒後玄関のドアがけたたましい音を立てた。 ………ほう、昔の漫画でお決まりのトーストをくわえた女子高生はこうやって作られるのか。 と関心していると、ふと父と目が合った。さては同じこと考えていたな。 「もう、忙しないわねぇ」 そう言いながら台所からでてきた母が、ふと手を止めた。 「そう言えばあの子、今朝はなんか違ってたわね」 「え?なにが?」 得に変わりなかったと思うけどなぁ。あ、髪型かな。 「寝坊して結べなかったんだろう」 父の言葉に、ああなるほどと返事をして母は椅子に座った。 「あ、虎彦」 そろそろ本気で起こして来ないと。 その時だった。 「………」 のそりとリビングに入ってきた大きな身体。弟の虎彦だ。双子なのに小柄で細身の兎美とは違って2メートル近い、いや超えてるな。あれは。 「お、おはよう」 「………おう」 思春期なのか、中学三年頃からめっきり口数が減って家族で過ごさなくなった少し年の離れた弟との接し方が分からないでいる。 他の家族はそうでもないのか、淡々と距離感を上手くはかりながらやっているようだ。 こういう所で疎外感感じるのは仕方のないことなのかな。 「ちょっ、あんた!それ、ええ……!?」 そんなことをつらつら考えていると、母が絶句している声が聞こえた。見れば父も固まっている。 両親の視線の先を辿っていく。 「!!!」 弟の髪が、鮮やかな、煌めく金色に………金髪になっていた。
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