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休み明けの憂鬱な人達が行き交う街通り。僕は今、本日の予定を犠牲に弟を尾行している。
兄として心配なんだ。思春期の弟が突然金髪にしてきたのだ。心配しない方がどうかしている。
うちの両親は思春期だし難しい年頃ってことで、兄弟である僕に話を聞いてきてくれと頼んできたのだ。
深深と被った帽子のつばを触り、ため息をついた。
「………とは言ってもなぁ」
学校には向かわず、駅前で誰かと待ち合わせしているようだ。
「ごめんごめん」
「遅い」
「だからごめんってぇ」
妹の兎美だ。しかしその風貌に僕は思わず叫びだしそうになった。
金髪だ。兄妹そろって白に近い金髪、プラチナカラーの頭している!
なんてことだ。朝の彼女の頭はどうやらウィッグ被って誤魔化してたみたいだ。
兄としてショック倍増だよ………二人共あんなに可愛らしい子達だったじゃあないか!お兄ちゃんお兄ちゃんって素直で甘えん坊で、顔もお人形さんみたいに可愛くてさ。
そりゃあ思春期だし、昔のように触れてくる事も触れることもないけど。それでもここまでイキナリくるとは思わなかったよ。
妹なんて前兆すらなかったじゃあないかぁ。
僕は崩れ落ちそうな膝を必死で立て直して、涙の滲んだ目を擦りサングラスを掛け直した。
ああこれじゃあ僕の方が不審者だ。でも仕方ない。自分の兄としての不甲斐なさで視界が揺らぐんだから。
僕は決意した。
弟と妹を更生させよう。もし変なのに影響されたり唆されてグレたのなら説得で縁を切らせるし、出来ることはなんでもしよう。
それが兄の役目だ。
親は何してんだと言われるかもしれないが、それぞれ事情があるから仕方ない。
ともあれ、まずは彼らと話をしてみよう。
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